2020年12月8日開催:日EUラウンドテーブル「京都議定書からパリ協定、そしてその先へ-2050年、日本とEUは共にカーボンニュートラルを目指す-」当日の記録

イベント概要

2020年12月、パリ協定は締結から5周年を迎えました。 2015–2020年は、世界中の政府、企業、都市、市民が気候変動の世界的な課題への取り組みを加速させた5年間でした。

この5年間はパリ協定のほんの始まりに過ぎません。今世紀の終わりまでに気温上昇を1.5°C以下に保つべく、課題が山積しています。 日本とEUは現在、野心的であるが必要な中間目標として2050年までにカーボンニュートラルに到達することを目指しています。

2020年12月8日に開催されたこのオンライン会議では、日EUの登壇者が、パリ協定が彼らとその組織にどのような変化をもたらしたかを説明した他、公共政策、ビジネスイニシアチブ、若者、科学、国際協力の各分野を通じて、2050年の実質ゼロ排出に向けた道筋を共に探求する議論を深めました。

プログラムおよび登壇者

開会挨拶:同志社大学学長 植木朝子氏、京都市市長 門川大作氏、駐日ドイツ大使 イナ・レーペル氏

パネルディスカッション:京都市市長 門川大作氏、駐日欧州連合代表部特命全権大使 パトリシア・フロア氏、駐日フランス大使 フィリップ・セトン氏、同志社大学教授 和田喜彦氏、積水ハウス株式会社常務執行役員環境推進担当 石田建一氏、Fridays for Future Japanオーガナイザー 酒井功雄氏、ソーシャル・イノベーション・ジャパン代表理事、MyMizu創設者 マクティア・マリコ氏

閉会挨拶:駐日スロヴェニア大使 アンナ・ポラック・ペトリッチ氏、駐日イタリア大使 ジョルジョ・スタラーチェ氏海外環境協力センター理事長、東京大学未来ビジョン研究センター特任教授 竹本和彦氏

パネリストの経歴はイベントのアジェンダページに掲載されています。

録画

概要

オープニングスピーチ

同志社大学の植木朝子学長からは、1872年からの同志社大学とヨーロッパの長きにわたる関わりや2017年にドイツでのキャンパス開設が紹介されました。今年新設された、CO2削減とエネルギー効率のための新技術を研究する新しいセンターの紹介もありました。京都の門川大作市長は、1997年の京都議定書の採択から18年後に採択となるパリ協定の原点であることに触れています。ドイツのイナ・レーペル大使も同様に、京都議定書の歴史について触れています。今年のCOVID-19の世界的大流行は、人間の行動と自然環境との強い相互関係への認識を我々に促したと述べたレーペル大使は、最近菅首相が表明した2050年の気候中立に対する発言を歓迎し、EUの同様の目標にも触れました。 日EUは、洋上風力発電やグリーン水素などの分野でさらなる協力が期待され、目標達成のためには市民社会・Fridays for Futureなどの取り組み・民間企業からの支援が必要です。

2050年までに日本を気候中立にする」という菅首相の表明の
重要性はどんなに強調してもしすぎることはありません。
EUも2050年までに気候中立を達成することを約束しました。

駐日ドイツ大使 イナ・レーペル

パネルディスカッションの冒頭、7人のパネリストから、パリ協定の採択からの5年の気候変動に対するそれぞれの組織の活動と取り組みが紹介されました。

京都の門川市長は、国際協定である京都議定書の採択が、地球温暖化対策を強化した京都市民による地域の取り組みを説明しました。 京都の学校ではCO2排出量を削減するプログラムがあり、近年の観光客の大幅な増加にもかかわらず、エネルギー消費量と廃棄物量は削減されています。 自家用車の減少と公共交通機関の利用の増加により、輸送もより持続可能になりました。 京都市は、2050年までにゼロエミッションの目標を採用しており、この目標は現在、170を超える他の日本の自治体で共有されています。

京都市は2050年までにゼロエミッションを目指しています。
現在170を超える日本の市町村が同じ目標を共有しています。

京都市 市長 門川大作

パトリシア・フロアEU大使は、EUおよび加盟国がパリ協定を支持することを想起し、気候関連の欧州連合の政策を紹介しています。これらは欧州市民と多くの企業からのリクエストであり、正しい行動でもあります。 欧州グリーンディールは、2050年までに最初の気候中立大陸になるために、ヨーロッパ経済を資源効率の高い現代経済に転換します。これにより新しい雇用が創出され、競争力が高まります。 化石燃料は終焉が必至で、再生可能エネルギーの開発は進み、クリーンで手頃なエネルギーを提供します。 輸送では、欧州は低排出ガス車またはゼロエミッション車にシフトします。 最近の気候災害(火事や台風)で証明されているように、パリ協定を実現するための具体的な行動が急務です。「人類には地球の代わりは存在しません。私達は今、一緒に行動する必要があります。」

人類には地球の代わりは存在しません。
私達は今、一緒に行動する必要があります。

駐日欧州連動代表部 特命全権大使 パトリシア・フロア

フランスのフィリップ・セトン大使は、2015年のパリ協定採択に成功した国際社会全体の大規模な動きである「パリの精神」を思い出させました。これは京都議定書が大きな一歩となった、20年以上にわたる気候交渉の結果でした。  しかし、今世紀末までに地球温暖化を1.5度に制限するには、課題が山積しています。 現在の優先事項は、現在の公約を具体的な公共政策に変換し、野心を高めることでなければなりません。 「我々はより多くのことを、より速くおこなう必要があります」。

我々は気候の為により多くのことを、
より速くおこなう必要があります。

駐日フランス大使 フィリップ・セトン

同志社大学の和田喜彦教授は、カーボンフットプリントを含むエコロジカルフットプリントの概念を紹介しました。これは、地球の能力を人間の活動に必要な資源と比較する概念です。人間の活動の現在のレベルは1.7の惑星を必要とし、現在の傾向が続けば10年以内に2つの惑星に達するでしょう。つまり経済と消費パターンを変える必要があります。しかし日本では、学生は環境知識を身につけて尚、中々行動を起こしにくい調査データが示されました。和田教授は、学生が変革のための個人の力を理解するプロジェクトを実施しました。結果、学生による具体的行動につながり、個人の生活の影響に対する意識を高めることが変革を推進するための強力なツールであると示唆されました。

酒井氏は、日本の気候変動対策の強化に向けて、個人の変化と体系的な変化という2つの目標への取り組みのため2018年創立のFridays for Future Japanを紹介しました。 これらを達成するために、Fridays for Future Japanは、気候変動問題に関する日本の若者の認識高めるためのイニシアチブを実施しています。また、気候関連のより強力な政策の必要性への意識を高めるため、公の行動(デモ、請願)を通じて政策立案者に訴えています。 酒井氏は、今後10年は非常に重要であり、2021年に日本で行われるエネルギーミックスとNDCに関する決定は大きな影響を与えることが予想され、 2030年と2050年までに脱炭素化を達成するには、いま変革が必要と訴えました。

パリ協定は、気候危機から私の未来を守るための
希望であり、ロードマップです。

Fridays for Future Japan 酒井功雄

産業界からは、積水ハウス常務の石田建一氏が、1999年の「環境未来宣言」の採択から2017年のRE100、2018年のSBT、2020年のゼロエネルギーハウスの立ち上げまで、自社の環境への取り組みを紹介しました。 2019年、積水ハウスは、1999年のレベルと比較して、新築住宅のCO2排出量を83%近く削減しています。同社は日本以外の5か国に拠点を置いており、文化の違いを目の当たりにしながらも、より持続可能な製品を世界市場に導入することに挑戦しています。

マクティア氏は、日本は持続可能性の分野で向上するため必要な技術と人材を持っていることから、ワークショップを通じて意識を高め、ノウハウを共有することを目的とした組織であるソーシャル・イノベーション・ジャパンを立ち上げました。ワークショップでは、日本の循環経済に対する市場の準備について課題があることが示され、これに基づき、Social Innovation Japanは、ユーザーが使い捨てのペットボトルの消費量を削減できる無料のモバイルアプリmymizuをリリースしました。現在、日本の主要企業や地方自治体がmymizuをサポートして使用しています。

パリ協定は、私達が必要とする真にグローバルな
コラボレーションが実際に可能であることを示しています。

ソーシャルイノベーションジャパン / MyMizu マクティア・マリコ

これらの最初のプレゼンテーションの後、パネリストは、このイベントのモデレーターである海外環境協力センターと東京大学の竹本和彦教授と、2つの主要なテーマについて話し合いました。

  • 京都議定書の遺産に関連して、パリ協定により日本と欧州はどのように変化しましたか?
  • 2050年にカーボンニュートラルに到達し、2100年までに地球温暖化を摂氏1.5度に制限するために必要な次のステップは何ですか。

これらの質問に対するパネリストのコメントは、以下で利用可能なイベントのビデオ録画でご覧ください(42分から)。

閉会挨拶

閉会挨拶では、2021年のEU議長国を代表するスロベニアのペトリッチ大使が、気候変動の方向性と国際協力の重要な役割の変革に向け行動する緊急性を示唆しました。「日EUは先駆者になることができます」とし、経済的・科学的・技術的能力を持ち、2050年にカーボンニュートラルの目標を一緒に達成することができると述べました。イタリアのスタラーチェ大使は、気候変動の野心の高まりが期待されるCOP26の共同議長を代表し、日EUのアプローチの強力な連携を主張しました。これは新しい経済的機会の源でもあるグリーン改革です。欧州企業は、再生可能エネルギーや循環経済などの分野ですでにグローバルチャンピオンとして認められています。

日本とEUには、気候変動との闘いの先駆者となる
経済的、科学的、技術的能力があります。

駐日スロヴェニア共和国大使 アンナ・ポラック・ペトリッチ

最後に、イベントのモデレーターである竹本教授は、講演者が共有した重要なメッセージに触れ、気候変動分野の日EUの関係、各分野でのより強力な連携の可能性、若者の関与と産業の重要性、市民とともに、そして将来に向け長期的かつ持続的な行動をとる必要性について説き、イベントを締めくくりました。

  

ご質問

イベント中にお寄せいただいた皆様からのご質問に、以下で回答いたします。

Q1: カーボンニュートラルを達成する上での企業の役割は何ですか。
また、「ベネフィットコーポレーション」(B Corps)の貢献とは何でしょうか。

A1: 積水ハウス株式会社・石田建一常務からの回答:日本企業は古くから「ステークホルダー資本主義」的な経営を目指しています。
特に住宅は他の商品と比べ製品寿命が長く50年、100年とサポートし続ける必要があります。この実現は企業が発展し続けることが条件であり、その為には社会から必要とされる企業になる事です。この為、企業は将来の子供達に対して責任を果たす経営が必要だと考えています。これが企業経営の基本です。実際に事業=社会貢献になるようにしています。
例えば、ゼロエネルギーハウスを販売することは脱炭素への貢献であり、さらに売り上げ向上に寄与します。
脱炭素の方法として排出権を購入する方法もありますが、この場合には今回のコロナ禍のように業績が悪くなった場合に、排出権購入費用を出せなくなり、脱酸素への貢献が止まってしまう可能性があります。しかし、当社では業績が悪くなった場合には、もっとゼロエネルギーハウスを売ろうということで脱炭素への行動が止まることはありません。 さらに、ゼロエネルギーハウスは、これまでの住宅よりも健康的で快適で光熱費も安く、お客様にとっても大きなメリットがあります。

 

Q2: COVID-19は、持続可能性またはカーボンニュートラルの目標にどのような影響を与えますか。

A2: スロベニア共和国・ペトリック大使からの回答:パンデミックは、持続可能性とカーボンニュートラルの目標に、マイナスとプラスの両方の影響を与えるでしょう。 経済の苦戦とGDPの低下については、まずは経済回復が目標となります。一方でパンデミックのプラスの影響は、国や人々が自然災害やその他の災害、とりわけ気候変動や環境災害から身を守る必要性をより認識していることです。 したがってCOVID後の回復はターニングポイントです。経済はどのように回復するか、今こそ米国および世界経済の「グリーン回復」を促進する適切な時期です。

 

Q3: 日EUの両方の2050年のカーボンニュートラルへの目標は、特に民間企業の日本国内でのビジネスにどのように影響するでしょうか(特に、GHG報告、製品革新、規制状況について)。

A3: 積水ハウス株式会社・石田建一常務からの回答:これまで日本は2050年以降のできるだけ早い時期に脱炭素を行うという明確な目標を示してきませんでした。これにより市場形成が不確かなため、民間企業は技術開発をしても思い切った量産化の投資に踏み切れませんでした。しかし、今回の明確な目標により、自動車や電力の排出ガス規制も検討されており、民間企業が安心して投資が行える環境が整うと考えられます。これにより環境製品の遅れを取り戻すことでしょう。

 

Q4: 組織は、代表者に持続可能な生活の取り決めを課すことで、より大きなリーダーシップと模範を示すことができるでしょうか。

A4: スロベニア共和国・ペトリック大使からの回答:もちろんです。 ロールモデルは非常に重要であり、政治家や外交官は良い模範を示すことで意識を高める必要があります。 持続可能性について話すことは重要ですが、それを実践する事はさらに重要です。 私達は自身のライフスタイルを変えなければなりません。東京のスロベニア大使館では、車の使用をできるだけ減らすべく、私や外交官は自宅から職場まで歩いたり自転車を使うようにしています。他の大使館のスタッフにも車の代替として電動自転車を購入しました。 これらは小さなステップですが、それでも重要です。

A4: 日欧産業協力センター、ステファン・ル・ドゥからの回答:本イベントおよび2021年に開催される気候関連のイベントの主催者として、私達はイベントの開催において良い例を示すことの重要性を十分に認識しています。 このため全イベントとウェブサイトを気候に中立なものにしています。活動により発生するすべてのCO2排出量は、世界のさまざまな地域での持続可能なプロジェクトを財政的に支援することにより相殺されます。 たとえば、12月8日に開催されたこのイベントでは、インドネシアの水力発電プロジェクトを支援することでCO2排出量が相殺されています。

 

Q5: 日本では環境配慮よりも、経済性を優先する企業や低価格を優先する消費者が多いように感じます。その対象にどのように伝えることが効果的だとお考えでしょうか。

A5: 積水ハウス株式会社・石田建一常務からの回答:基本的には教育だと思いますが、最終的には規制でしょう。例えば、日本には電車に高齢者や体が不自由な人のためのシルバーシートが用意されています。これは国民全員が知っています。しかし、これを無視して座っている人は多く、実際には100%機能していないのが現実です。したがって、教育だけでは解決できません。義務化やカーボンプライシングなど実現するための仕組みが必要だと思います。

 

Q6. 炭素税の導入についておよび、導入がEU加盟国のエネルギー政策に与える影響についてどう思いますか。

A6. 駐日欧州連合代表部・ハイジ・ヒルチューネンからの回答:EUでは、「汚染者負担」の原則を適用し、脱炭素技術への投資を促進する効率的な方法である「排出量取引制度(EU ETS)」を選択しています。

 

Q7. パリ協定の下では、世界中のETS(炭素排出量取引)炭素価格は2020年までに1トンあたり40-80ドルの価格範囲に達する必要があります。しかし、世界最高値であるEU ETSでも20-30ドルにとどまっています。 EU ETSが目標炭素価格に到達するためにさらにどのような努力をすべきか、またEU ETSが世界中のETS市場と統合して炭素価格を引き上げ、ETSが低炭素技術の投資と開発の原動力となるようにする方法ははなんですか。

A7. 駐日欧州連合代表部・ハイジ・ヒルチューネンからの回答:EU ETSは、機能強化に向け数回の改革を経ており、その結果、近年、炭素価格が上昇しています。 2050年までにカーボンニュートラルを確保するためのEUの措置の一環として、EUのさらなる改革も予見されています。欧州委員会は2021年6月までに立法案を提示する予定です。

 

Q8. カーボンニュートラルと循環経済の関係に関するEUの見解は何ですか。

A8. 駐日欧州連合代表部・ガブリエレ・ロ・モナコからの回答:気候変動への対策を検討する際、再生可能エネルギーおよびエネルギー効率対策が間違いなく重要な役割を果たします。 ただし、製造業は総排出量のかなりの割合を占めるため、主要な工業製品に焦点を当てた最近の分析では、循環経済戦略を4つの主要材(セメント、鉄鋼、プラスチック、アルミニウム)に適用すると、2050年に排出量を40%削減できることが示されています。 循環経済は、気候の中立性の目的に貢献する大きな可能性を秘めています。

 

Q9. 今の若者世代は、SNS等で社会の変革に向けた行動をしやすくなっている分、行動をしない責任にもプレッシャーを感じる世代なのではと想像します。行動する学生・しない学生で分断を感じることはありますか。また、行動をせねばとプレッシャーを感じている学生に伝えたいことはありますか。

A9. Fridays For Future・酒井氏からの回答:SNSでの投稿などを通しての情報発信をしていると、「意識高い」と思われてしまうことももちろんあります。そういう意味では発信をしている側と、しない側の分断が起きかねないと思います。だからこそ、日本ではより社会課題のアクションへの参加の入り口を入りやすくすることが必要だと思っています。自分たちがカッコイイ・デザイン的にシェアしたくなるものにすることが、関心がない人々をアクションに巻き込む上でも必要だと思っています。

とても深刻かつ時間が差し迫っている問題だからこそ、アクションをしなければと強迫観念のように感じてかえってモチベーションが維持できなくなることもあるかと思います。問題の解決のためには、持続的にアクションを行うことが大切です。自分なりのアクションのペースやセルフケアをすることを忘れず、自分を大事にしながらアクションを続けてほしいと考えています。

 

助成

このイベントは欧州連合の財政的支援のもとに、日欧産業協力センターが開催します。表明された意見・主張は、主催者と講演者によるものであり、欧州連合の見解を反映するものではありません。

主催

駐日欧州連合代表部
日欧産業協力センター
駐日フランス大使館
同志社大学 

協賛

欧州連合連携部門
駐日フランス大使館

気候中立性